· 

オリンピックが終わって

コロナウィルス感染が急拡大し、緊急事態宣言の下でのオリンピック開催には、すっきりしない気持ちを持っていた方も多いと思います。私のように子供時代に夢と希望にあふれた「1964年東京オリンピック」の体験を持つ者には、今回はとても同じオリンピック大会とは思えないものでした。

 

しかしどのような立場であっても、1年延期されたこの大会をさまざまな困難を乗り越えて遂行した運営スタッフや事務局、最前線での一人一人の努力には頭が下がります。

今回、私が印象的だったのは馬術競技の馬です。NHKの番組によれば、このオリ・パラ合わせた大会には世界中から330頭もの馬が参加したといいます。

輸送には馬だけでなく、馬具、飼料、水もあり、馬専用機によるチャーター便や定期貨物便など多数の航空機が使用されました。飛行機で日本にやってきて、短期間のうちに騎手も馬も全力を発揮できるよう調整をしなければなりません。とりわけ猛暑かつ湿度の高い真夏の東京の環境の中では大変な苦労があったようです。競技が始まってからも万全を期するため、馬のドクターや救急車も用意されており、専門スタッフだけで約60人が待機していたそうです。

そのような苦労の上に展開された華麗な馬術競技。総合馬術のクロスカントリーや障害での激しくも美しい人馬の挑戦は、騎手と馬とサポートするスタッフのチームプレーがあってこそ成り立つものだと感じました。

国籍や役割、立場の違いにかかわらず、無事に競技ができるためには、一人一人が目前の自分の役割を全うするというその一つのことだけなのです。このひたむきさの積み重ねこそがコロナ感染爆発の中での異形のオリンピックを何とか無事に完遂させた魂のように思われます。

馬術の放送は非常に少なく、時間的にも限られたものでしたが、新しい視点を得た私のオリンピックでした。