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2つの柱を考える

昨年の秋からある企業で50歳に到達した方のキャリアコンサルティングを行っています。

事務系、技術系、技能系それぞれの分野で入社以来約30年前後頑張ってこられた方々です。仕事場も現場事業所あり、本社あり、研究所あり、と、さまざまです。

 

このキャリアコンサルティングで一番時間をかけるのが、入社してから今日までの職場と仕事の振り返りです。100人いれば100通りの仕事人生があり、実にいろいろな仕事にせいいっぱい取り組まれ、一つひとつの仕事に思い出や、忘れられない出来事があることがわかります。そうした今までゆっくり考えてみることのなかった会社でのキャリアの棚卸しの中から、その方の特性や仕事への考え方、そして強みが描き出されます。

多くの方が、今までこういうことを考えることがなかったので、今回のような振り返りの機会がとても良かった、と感想を述べてくださいます。

その上で、それではこれから50歳以降、どういった分野や仕事でキャリアを築いていきたいですか、あるいは貢献していきたいですか、とお考えを伺います。

 

そのような時、私が聞き入ってしまうのは、2つ(ないしは3つ)の大きな柱があるかな、と答える方です。「柱」は選択肢、セカンドベストといってもいいかもしれません。決して自慢げに話すのでなく、そうですね、強いて言えば…、みたいな話し方でお話をされるのですが、中身はとてもよく分析されていて説明力あることが多いのです。

  第一線でいわゆる営業マン一筋でやってきたが、営業のイベントの関係でショールームの企画や運営をやったことがあり、何か自分に合っていたような気がするのでそうした分野もできると思う。技術開発の専門家として研究所でやってきたが、ある時機器の不良や不具合があってリコールを半年くらい担当した、その時に広報活動やお客様との直接対応も必死にやり、多くの気づきを得た。思っていた以上にできたと感じていて、そちらのほうもできなくはない気がする。事業所で経理の担当だったが、本社の経理部門へ異動してから経理業務を通じて全社の業務内容を理解できるようになった。経理の専門家でもいいし、全社を俯瞰してできるコーポレートスタッフもできるような気がする。

 

そうした一歩足打法でない「こっちなら〇〇。これなら△△」みたいな、連想といいますか、発想の切り替えや視野のチェンジができることは、自分のキャリアを考える上で大事な能力です。ちょっとした気づき、発想の広がりや連想を考えるくせを持つ、と言ってもいいかもしれません。

 

仮に自分を一事業者としてみるならば、どんなことが使ってもらえるか、提供できるか、活用できそうか、は、企業の組織人であっても、とても大事な観点ではないでしょうか。こうした練習が、自分のキャリアは自分が持っているもの(オーナーシップ)と考える基礎にもなりうるものと思います。