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使わなくなった言葉(その2)

私が子どもであった前回の東京オリンピック(1964年)のころを思い出し、あのころ使っていて最近耳にすることのなくなった言葉を思い出しています。前回の続編で3つを取り上げてみました。

 

「横入り」

この言葉はまだ死滅していないのではないでしょうか。何かを待っている列などに割り込む意味で幅広く使える言い方ですが、「横入り」というわかりやすい表現なので、子供っぽい言い方にも受け取られてしまうようです。

横入りそのものが好ましくない行為なのでこの用法はけんか腰ということになります。「おい、横入りすんなよ!」「横入り、だめだぞ!」などと、怒りながら言うので攻撃口調になり、子供たちのケンカの発端の一つでもありました。

しかし、ネットをチェックしていたら、この言葉は愛知県はじめ中部地方を中心に使われる言葉で、中部と東北以外は使用頻度が少ないのです。名古屋方言がいつの間にか東京に入っていたということなのかもしれません。

 

「おっかない」

消えつつある単語の一つであるそうです。小さいころから耳にしていると普通すぎる言葉なのですが、怖い、恐ろしい、を表現するときに使います。 

自然に対しても、社会に対しても、人間に対しても使える言い方であるものの、子供の頃の思い出からすると、人に対して、その様子を表現する手段として使っていた記憶があります。

これも東京方言の一つで、下町の東京弁であるという説明を読みました。なんとなく大人になると使うのを躊躇して、思わず他の言葉に言い換えてしまったりするのです。

 

 「愚連隊、よたもの」

 当時は悪い奴、怖いひとが本当に多かったように思われます。身の回りのいじめっ子、ガキ大将、不良少年、やくざ、挙動不審者など、今でいう不審者は質も量もはるかにあったように感じます。

今ではマスメディアが「昭和」を取り上げ、懐かしいもの、ノスタルジックなものとして美化しすぎていて、首をかしげることも少なくありません。戦後の「昭和」は理想郷だったのではなく、今と違ってあらゆるものを包含する混沌とした社会であったのではないでしょうか。 

そんな中、子供たちにとって怖かったのはいじめっ子やガキ大将、そして「グレている」から変化した「愚連隊」(若者暴力集団)や「ヨタモノ」でした。「不良」という言葉も最近は聞かれなくなりましたが、こうしたボキャブラリーが豊富だったということも私の子ども時代の一つの姿を反映しているといえましょう。